建築物と劣化
建築物劣化の主な原因は、木造ではシロアリと腐食で、鉄筋コンクリート造では錆びやコンクリートの劣化で、鉄骨造では錆びが挙げられます。
それぞれ耐用年数が決められており、劣化を軽減、回避する方法に特徴があります。
木造建築物耐用年数
木造建築物の各部位において、それらを構成している材料のかなりの部分が、生物劣化を生じた状態となるか、
または、通常の修繕や1部の部材の交換、更新を行っても、生物劣化により建物としての性能を回復できない状態となった時点を耐用年数に達したとする。
生物劣化とは腐朽菌ならびにシロアリによる木材の腐朽ならびに食害をさしている。
腐朽菌は下等植物、シロアリは昆虫でともに生物であり、その生育に対して酸素、湿度、栄養分は不可欠である。
水分は建物の雨仕舞、水仕舞、防水など設計、維持保全に関連し、栄養分は樹脂、薬剤処理に関連、湿度は立地・環境、建物部位に関連する。
木造建築物の経年劣化
木造の劣化の要因は、腐朽菌やしろあり(いえしろあり、やまとしろあり)による生物劣化、水分、接合金物の腐食等による、構造木材の腐朽です。
水を使用する部位、水がかかりやすい部位は、腐朽菌やしろありを発生させやすい場所であると共に、水分によって劣化しやすいので、十分に気をつけることです。
また、構造躯体の木材を接合する接合金物の腐食も、木造の劣化の要因です。
特に、海の近辺や温泉地は金物の腐食がおきやすいので、十分に気をつける。
水分や湿気によって腐食しやすい箇所
・一般に日照、通風の悪い箇所
・雨露にさらされやすい部分・例えば直接外部に接している外壁、軒先など。
・台所、便所、浴室など。
・腐朽は北側にもっとも現れやすく、ついで西側、東側、南側の順番になります。
・モルタル塗り大壁構造(壁仕上げ材で壁を隠す壁構造)は真壁構造に比較すると腐朽しやすい。
・内部結露の生じる恐れのありところ。
・金物と接し、表面結露の恐れのあるところ。
水分や湿気によって腐朽しやすい木部
・コンクリートなどの保水性のものに接するまたは埋め込まれる木材
・給水、排水管に近隣する木部
・外壁内の水の停滞しやすい下部、例えば土台、柱、筋かいなどの下部
・モルタル塗りの下地
・転ばし大引き、転ばし根太
・柱、窓台の仕口部
やまとしろありの食害箇所
・土台、火打土台、大引き、一階根太掛けおよび床束、窓台
・柱、間柱、筋かいの下部
・下張材、下地材の下部
いえしろありの食害箇所
・土台、火打土台、大引き、一階根太掛けおよび床束、窓台
・柱・間柱、筋かいの下部
・下張材、下地材の下部
・柱と胴差しの仕口
・胴差し、台輪、火打ち梁と二階梁との仕口面および軒桁との仕口面
・ろく梁、間仕切り桁、合掌、火打梁などの敷桁および軒桁との仕口面
・大壁内部の部材
鉄筋コンクリート造建築物耐用年数
鉄筋コンクリート造骨組は、その骨組のかなりの多くの鉄筋が発錆するおそれのある状態となり、かつ、通常の修繕や一部の交換、更新を行っても骨組としての性能が回復できない状態となる時点を耐用年数とする。
鉄筋コンクリート造建築物の経年劣化
鉄筋コンクリート造の建築物は、計画耐用年数として、100年を目標として設計されている。
しかし、建築物は年々劣化していきます。 これを経年劣化といいます。
鉄筋コンクリート造の経年劣化は、外部環境から作用する外的な劣化要因とコンクリート自体の内的な要因とがあります。
外的な劣化要因としては、骨組に対して、性能を低下させる外部環境からの作用で、海岸地域における海塩のコンクリートへの侵食、寒冷地による凍結融解作用、その他酸性土壌や腐食性物質などの作用があります。
内的な劣化要因としては、コンクリートのひび割れ、コンクリートのかぶり厚さの不足、アルカリ骨材反応などがあります。
外的な劣化要因または内的な劣化要因によって引き起こされる性能の低下のことを劣化現象と呼んでいます。
コンクリートの中性化、鉄筋腐食、ひび割れ、漏水、強度劣化、大たわみ、表面劣化、 凍害の劣化等が劣化現象として現れます。
この様に、鉄筋コンクリート造の建築物に現れた劣化現象が、建築物に重大な影響を与えるかどうか、許容範囲の劣化であるかどうかの判断が大切になります。
この様な状態にならないように、設計時の計画耐用年数、施工時の施工条件、施工管理が、大切です。
竣工時の建築物は所要の性能を保有しています。 許容劣化状態の建築物であるといえます。
しかし、年月の経過と共にコンクリートの中性化が進行し、乾燥収縮、温度応力、荷重、不等沈下などによるひび割れを発生します。
また、寒冷地では凍害を、海岸地域では海塩のコンクリートへの侵食など多様な外的な劣化要因によって劣化します。
鉄骨造建築物耐用年数
鉄骨造骨組またはこれを構成する部材の表面の塗膜が劣化し、鋼材が腐食によりその断面積が平均10%減少した状態になり、かつ、通常の修繕や一部の交換、更新を行っても、その性能が回復できなくなった時点を耐用年数に達したとする。
一般に鋼材は腐食により厚さが1%減少すると、強度は5~10%低下するとされている。
また、鋼材の両面から5%程度減少すると構造安全性に留意する必要があるとされている。
鉄骨造建築物の経年劣化
鉄骨造の経年劣化の要因は、湿気、水分による錆びの発生です。
鉄骨造に使用している鋼材は、湿気によって錆びます。
この錆び(さび)が鋼材の強さを低下させていきます。
鋼材の強さが錆によって、どの位強さを低下させるかといいますと、
・鋼材の厚さの1%ぐらい錆びると、鋼材の強さが5~10%低下します。
・鋼材の厚さの10%ぐらい錆びると、鋼材の強さが半分ぐらい低下します。
錆びに対して何の処理もしないでいたら、どのくらいのスピードで、鋼材は錆びていくかといいますと、
都市地帯:0.03~0.06mm/年、
郊外地帯:0.01~0.03mm/年、
海岸地帯:0.06~0.12mm/年、
重工業地帯:0.12~0.30mm/年です。
(日本建築学会、鉄骨工事技術指針・同解説による)
この様に、鉄骨造の建築物の劣化に大きな影響を与えるのは、錆びです。
また、錆びを発生さす要因は、湿気、内部結露、防水工事等です。
湿気、水分に対する対策を、設計時にしっかりと計画し、施工時の施工条件や施工管理が大切です。
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