樋(とい)工事
樋工事とは、建物の屋外に設けられる雨樋、軒樋、立て樋、集水器、あんこう、はい樋、ますに関する工事のことです。
金属板、溶融亜鉛メッキ鋼板は、薄くて加工しやすく、はんだ付けができるので、樋の製作には適した材料です。しかし、「手入れをしないと耐久性が落ちる」「酸性の雨水にはあまり強くない」などの欠点もあります。
塗装溶融亜鉛メッキ鋼板やポリ塩化ビニル金属積層板、塗装ステンレス鋼板には、両面塗装品を使用します。そうすることで、樋の寿命を延ばしながら、塗装の手間を省けます。
材料
溶融亜鉛メッキ鋼材
塗装溶融亜鉛メッキ鋼板
ポリ塩化ビニル金属積層板
ステンレス鋼板
塗装ステンレス鋼板
アスファルト被覆鋼板
樹脂被覆鋼板
銅板
鋼板の厚さ
一般的な厚さは0.5mm~1.0mm。アスファルト又は樹脂被覆銅板ならば0.4mm以上、高耐候性圧延鋼材ならば2.0mm以上になります。
材料と接合材の組み合わせ
・ステンレス製接合材は、全ての材料に適応します。
・亜鉛メッキ製接合材は、溶融亜鉛メッキ鋼材に適応します。
ただし、塗装溶融亜鉛メッキ鋼板については電食の可能性があります。
・銅製接合材は、全ての材料に適応します。
ただし、ステンレス鋼板、塗装ステンレス鋼板、アスファルト被覆鋼板、樹脂被覆鋼板については電食の可能性があります。
・アルミニウム製接合材は、溶融亜鉛メッキ鋼材のみに使用できますが、電食の可能性があります。
接合材料
・接合材料は、リベット、はんだ、接着剤、樋受金物、補助材料があります。
樋受金物には、谷樋の底幅が750mm未満ならば帯鋼を使い、それ以上ならば山形鋼を使います。
・補助材料には、小ねじ、木ねじ、金属線が使われます。
・どの接合材料を使う場合も、異種金属間の電食に気をつけます。
鋼板製樋および銅板製丸軒樋の加工と取り付け
軒樋
・鋼板製樋および銅板製丸軒樋では、樋の両端部分は径6mm程度に耳巻きをし、ひずみのないよう円形にします。
継手は長さ150mm、径6mm程度の力心を相互に差し込み、重ね代を40mm程度にしてはんだ付けします。銅製の場合、継ぎ手の長さは30mmとなります。
・銅板製樋でリベット留めする場合は、胴の薄平リベット径3mm程度、間隔15mm程度にします。
・樋受金物は流れる方向に勾配をとり、間隔900mm程度で取り付けます。
ただし、集水器、あんこうの左右では間隔を300mm以下にし、積雪地域では間隔を600mm以下にします。
・樋と受金物は、径1.2mm以上の金属線で固定します。
ただし銅板製樋の場合は、受金物の押え板で固定します。
・樋の水止め、曲がりは、しっかりと取り付けてはんだ付けします。
・樋は、あんこうまたは集水器部分で伸縮を吸収します。
・角軒樋では流れ勾配を1/200程度とし、その他の点は丸軒樋と同じです。
立て樋
・鋼板製および銅板製丸立て樋は、鋼板や銅板を丸めて作ります。
・継手には小はぜ掛けを使いはぜの緩みを止めます。上にくる立て樋を下の樋に、樋の直径の長さ分だけ差し込んで継ぎます。
・立て樋受金物は、1000mm以下の間隔で取り付けます。ただし、銅板製の場合は間隔を900mm以下にします。
鎖立て樋
・鎖立て樋を使用する場合、集水器やあんこうの胴は下側で絞り、雨水がスムーズに鎖に伝わるようにします。
・鎖立て樋は垂直に保ち、上部、下部とも固定金具でしっかりと取り付けます。
集水器・あんこう
・流水の衝撃に耐えられる強度のものを、立て樋または、呼び樋と軒樋にしっかりと取り付けます。
・はぜは、小はぜ掛けおよびダクトはぜを使い、はんだ付けします。
はい樋
・はい樋は、屋根面上を屋根勾配に沿って設置します。
・はい樋を作る際は角樋に準じます。
・背板は、60mm程度の間隔で取り付けます。
・はい樋の水上部は立て樋に、水下部は集水器、又は、あんこうに接続します。
ます
・ますは集水器に準じて作ります。
・ます上部には可動式のふたをつけます。
・受金物を用いてしっかりと取り付けます。
谷樋
谷樋本体は、落ち口と落ち口の間、もしくは、落ち口とエキスパンションの間を、1枚の板で加工します。
・継手は、60mm程度で重ね合わせ、径3mm以上のリベット留めとします。
リベット間隔は、50mm程度にし、2列を千鳥に留め付けます。
・塗装板の場合は、継手部分にシーリング材を入れます。塗装板以外の板では、はんだ付けします。
・谷樋の本体は、受金物に付いた吊子で固定します。
・谷樋の長さ方向は、1枚の板で作り、原則的には継手を設けません。
・谷樋が長い場合は、谷樋水上端部に水止板を取り付け、エキスパンションを取ります。
この時のクリアランスの量は20mmです。
また、エキスパンションキャップは水止板に軽くつかみ込んで取り付けます。
・これらの材料は、いずれも谷板と同じ材料を使います。
硬質塩化ビニル雨樋の取り付け
硬質塩化ビニル製雨樋は、「さびや腐食がない」「酸アルカリに侵されない」「電気絶縁性がある」「難燃軽量である」などの利点があり、施工も簡単です。
しかし、「温度変化による変形、剛性が低い」「気温の低い地域では低温による強度低下が起こる」などの欠点もあります。
硬質塩化ビニル製雨樋には、形状や色彩など多くの種類が揃っていて、意匠性に富んでいます。
材料
硬質塩化ビニル雨樋の品質は、JIS規格に準じます。
軒樋の工法
・軒樋は、専用の継手、水止め、曲りなど専用の部品を使い、接着剤で接合します。
接合した軒樋の長さは10m以内にし、もし10mを超える場合は伸縮継手を設けます。
・あんこうまたは集水器部分で伸縮を確実に吸収する必要があります。
・軒樋の取り付けの勾配は1/200以上にします。
・樋受金物は、軒樋に合った形状・寸法のものを、流れ勾配をとり、700mm程度の間隔で、通りよくたる木または鼻かくしに取り付けます。
・樋と受金物は、径1.2mm程度の金属線で、樋の伸縮挙動を阻害しないように固定します。
受金物の鉄部は溶融亜鉛メッキを行ないます。
・軒樋は、銅線またはステンレス鋼線で、軒樋の伸縮を妨げないように受金物にしっかりと結びます。
立て樋の工法
・立て樋は、専用の継手を用い、接着剤を併用して接合します。
継いだ樋の長さが10mを超える場合は、エキスパンション継手を設けます。
・立て樋の受金物は、立て樋に合った形状・寸法のものを1000mm以下の間隔で取りつけます。受金物の鉄部は溶融亜鉛メッキ(ドブ漬)を行ないます。
・立て樋には各受金物ごとに、樋と同質材の下がり止めを接着剤で取りつけます。
・立て樋が曲がる場合は専用の異形管を使い、接着剤を使って接合します。
じょうごおよび呼び樋の工法
・じょうごと呼び樋の組合せの場合は、軒樋と立て樋に合ったじょうごを使い、
呼び樋は立て樋と同じ形状・寸法のものを用います。
取りつけ方法は、立て樋の工法によります。
用語
樋関係
・呼び樋
軒樋またはルーフドレーンから、水平方向に離れた位置にある立て樋に雨水を導くための樋。
・じょうご
軒樋の落し口で、雨水を立て樋に導くために設ける箱状の部分。
・あんこう
じょうごと呼び樋が一体化した部分。
・ます
じょうごや呼び樋と、立て樋との接合部分に、意匠上の目的で設けられる箱状の部分。
・伸縮継手
樋が長い場合、途中に設ける熱伸縮吸収のための継手。エキスパンション継手も同じ意味です。
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