照明設備計画
目的とポイント
照明設備計画は、昼間の昼光利用の明るさの不足分を補い、夜間の各空間の行為に適した光環境を創造しながら、人工照明エネルギー消費を削減することを目的とした技術です。
昼光の利用技術と併用することにより、より高い省エネルギー効果を期待できます。
高効率の照明機器を採用することでエネルギー消費を削減する「機器による手法」、点滅・調光などの制御を活用することで、必要な明るさを必要な時間給仕することを実現する「運転・制御による手法」、照明器具の適切な配置計画を行うことで、必要な場所に必要な明るさを給仕することを実現する「設計による手法」があります。
基本的な方向性は、一室一灯照明方式から、多灯分散照明方式へ以降することです。
照明設備計画の検討ステップ
ステップ1 各空間に要求される光環境の検討
(1)各空間で行われる作業・行為の検討
(2)各空間を利用する住まい手の視覚能力の確認
ステップ2 昼光不足箇所の検討
(1)太陽光の状況把握と昼光利用計画
(2)昼光不足箇所および程度の洗い出し
ステップ3 各空間の照明配置、光源および器具の種類の検討
(1)各空間の照明配置および照度の検討(手法3)
(2)省エネルギー効果の高い光源および器具の種類の選択(手法1)
(3)空間移動時の温度差の確認
ステップ4 各照明の制御方法、スイッチの位置の検討(手法2)
(1)各照明器具の制御方法の検討
(2)スイッチの位置の検討
照明設備計画の省エネルギー手法
1.空間での行為の確認
2.基本となる必要照度の確認(JIS照度基準参照)
照度基準値はあくまで目安であり、必ず満たしていなければならないというものではありません。
住宅の明るさは、住まい方や住まい手の好みによって大きく変わるからです。
3.住まい手の変化による必要照度の補正
視覚能力は加齢とともに低下するとされており、住まい手の現状把握と将来変化の予測を行い、行為に対する必要照度を補正します。
高齢者の場合は、照度基準値の1.5倍以上が望ましいとされています。
4.昼光利用の範囲と程度の確認
5.照明配置計画と器具の選定
各行為がどの場所で行われる可能性があるかを予想し、必要照度が得られるように照明の位置を決定します。
この際、家具の配置変更等で行為が行われる場所が変化する可能性が高い場合は、あまり厳密に家具と対応させずに、明るくすべきエリアと明るくする必要のないエリアといったように空間を大きく分けて捉え、それに応じた照明配置とします。
部屋の形状や内装などとの調和にも注意します。
空間に余裕があれば、スタンド等の移動可能な照明を配置することも有効です。
光環境を検討する上で、行為に応じた機能的な照明だけでなく、照明がつくり出す雰囲気にも配慮する必要があります。
光色も重要な光の要素で、白色光を用いると活動的な雰囲気になり、暖色光を用いると落ち着いた雰囲気になりますので、子供室は白色光主体、寝室は暖色光主体というように、部屋の用途によって使い分けると効果的です。
また、清掃や交換などのメンテナンスが容易かどうかについても配慮し、使用するランプは、住まい手が入手しやすいものとします。
昼光利用を補う照明については、その範囲や程度に注意し、無駄のない計画とします。
6.制御方法の検討
各行為に適した照明パターンを実現できるような制御方法を検討します。
きめ細かい明るさの設定が必要なエリアは調光可能な器具を用いて調光制御を行い、その必要のないエリアは高効率器具を用いて点滅制御を行います。
人の行き来が少ないエリアに人感センサーを用いることや、昼光利用が考えられるエリアに照度センサーを用いることも有効です。
セキュリティシステムなど、照明設備以外のシステムとの連動も検討します。
また、スイッチは動線を考慮してできるだけ操作しやすい場所に設置し、階段や廊下では三路スイッチや四路スイッチを採用します。
7.安全性の確認
階段や段差が存在する通路部分の安全性は特に注意し、明るさを十分に確保します。
照明を設置しても、立ち位置によって足元が影になる場合などがありますので、いろいろな視点を想定して検討することが重要です。
照度を十分に確保しても、明るい空間から暗い空間へ移動する場合には見えにくくなることも多いので、そうした動線上には段差等のない計画をすることが大切です。
手法1 機器による手法
設置する照明設備機器の種別により、同じエネルギーでより高い効果、より明るい空間を実現することが可能です。
機器によって特性や省エネルギーの手法は異なります。
省エネルギーの観点からは、イニシャルコストがやや高くても消費電力量の少ない機器を選択することが望ましく、ランニングコストを考慮すれば、結局トータルコストは小さくなる傾向があります。
機器についての情報を収集し、適切な選択を行うことが重要となります。
(1)省エネルギー手法と機器の対応
照明の省エネルギーを考える場合、光源および器具をどのようなものにするかが第一のポイントになります。
エネルギー消費の少ないものを選ぶだけでなく、求められる光環境を実現するために、各機器の特徴を理解した上で採用することが求められます。
また、配光は明るさの分布を検討する上で不可欠なものであり、これをある程度理解してカタログを読みこなすことが、適切な機器選びにつながります。
(2)光源の種類と特徴
光源の選択は、消費電力、光色、寿命を考慮して行うことになります。
また、容易に電球を交換できるように、入手しやすい製品を選ぶことも重要です。
a.電球形傾向ランプ
一般電球とほぼ同じ大きさです。
光色は3色(昼光色、昼白色、電球色)があります。
消費電力は一般電球の約1/4です。
寿命は一般電球の6~8倍です。
調光可能タイプも出てきており、一般的になれば省エネに寄与することが期待されています。
b.Hf蛍光ランプ
管径が細いため、器具を薄くできます。
消費電力が少なく、長寿命です。
調光が可能(環形は段調光)
c.反射形ハロゲンランプ・レフランプ
ダウンライトの開口径を小さくできます。
反射形ハロゲンランプは、ミラー形状により配光の異なるタイプがあるため、ランプ交換時に配光を変えられます。
ハロゲンランプは、きらめき感があり、美観性が高いです。
ハロゲンランプは、集光性が高く、メリハリのある空間をつくることができます。
d.LED
長寿命です。(40000h)
消費電力、発熱が少ないです。
器具を小さくできます。
赤・緑・青の様子を調光して混色することにより、任意の光色をつくり出すことができます。
白熱電球や蛍光ランプに替わる次世代光源として期待されています。
(3)高効率器具の種類と特徴
適切な光源を選択した上で、高性能な器具を採用することにより、さらに快適性と省エネルギー効果を高めることができる場合があります。
光源から発せられた光を高い効率で反射させる器具や、明るさを減少させる汚れの付着を抑制する器具などが、その代表です。
a.高効率反射板ダウンライト
銀を蒸着していて、明るく高品位な光となります。
b.光触媒膜付器具
ガラスグローブ表面に光触媒膜をコーティングしている。
表面に付いた汚れを光触媒機能で自然に分解する。
(4)照明機器の種類による配光バリエーション
光源や照明器具によって、光の広がり方(配光)が変わります。
同じ消費電力でも、求める明るさの分布を実現できる配光特性のある製品を選ぶことにより、良好な光環境が実現できます。
a.ペンダント(配光制御形)
テーブル面を明るくし、空間や人の顔は適度な明るさに配光制御します。
b.ブラケット(配光制御形)
上下方向配光、上方向配光、下方向配光を選択できます。
c.ダウンライト
ダウンライトの場合、器具と光源の組み合わせを変えることによって、配光が大きく異なることがわかります。
電球形蛍光ランプを用いると被照面が均一になり、ハロゲンランプを用いると器具直下が明るく光があまり広がりません。
d.スポットライト
スポットライトにミラー付きの光源を用いる場合は、器具は同じでも光源を変えることによって、配光が大きく異なることがわかります。
手法2 運転・制御による手法
こまめな照明のオン・オフや調光は、省エネルギーに直結します。
ただし、住まい手の意思にだけ頼る手動のシステムでは、消し忘れが頻繁に生じる可能性が高くなります。
照明エネルギーの消費量を削減するためには、消し忘れを防ぐ自動の制御システムを導入することが必要となります。
1.制御方法による省エネルギー
(1)制御方法の種類
制御方法には様々なタイプがあり、照明の配置計画と関連づけて検討することが重要です。
照明の目的と制御方法が一致していない場合は、使い勝手が悪くなったり、安全性が損なわれるおそれがあります。
特に、階段や段差等がある場所は慎重に検討しましょう。
入力部 | 制御部 | 配置 | ||
---|---|---|---|---|
手動 | 人(意思) | 調光 | 調光スイッチ | |
リモコン | ||||
ON-OFF | 壁スイッチ | 三路、四路 | ||
プルスイッチ | ||||
リモコン | ||||
自動 | 時間 | タイマー | 一時点灯スイッチ | |
タイムスイッチ | ||||
リモコン | ||||
人(熱・動き) | 人感センサー | 制御装置(器具内臓) | ||
制御装置(別置形) | ||||
昼光 | 照度センサー | 制御装置(器具内臓) | ||
制御装置(別置形) |
(2)各制御方法の特徴
a.調光スイッチ
必要な時に手動で調光します。
最適な明るさに設定できますが、スイッチプレートが大きくなります。
省エネ効果は小~中です。
複数器具一括制御用は、複数の器具の調光設定を記憶させて、その設定シーンをボタン1つで再生できます。
白熱電球と
Hf蛍光ランプが対象です。
b.リモコン
スイッチを移動可能とする複数の機器を一括して操作できます。
スイッチ位置まで動く必要がありませんが、リモコン自体がなくなると不便になり、待機電力も必要です。
省エネ効果は小~中です。
器機単体用は、器具に受信部が内蔵されており、リモコンでコントロールできますが、専用器具が必要です。
複数器具一括制御用は、専用アダプタと組み合わせることで、複数のリモコン付きでない器具を単一のリモコンでコントロールできます。
c.タイマー
設定した時間だけ点灯します。
無駄に点灯しませんが、設定する手間が必要です。
省エネ効果は小さいです。
一時点灯スイッチは、点灯してから一定時間後に、自動で消灯させることができます。
タイムスイッチは、点灯時間や消灯時間を自由に設定できます。
d.人感センサー
人の体温および動きをセンシングします。
無駄に点灯しませんが、動きがないと消灯してしまいます。
省エネ効果は小~中です。
器具内蔵形は、器具に人感センサーが内蔵されており、人(熱)の動きを感知して自動的に点灯し、設定時間後に消灯します。
別置形は、親機1台に対して、子機(検知器)を複数台接続することができます。
e.照度センサー
照度(昼光)をセンシングします。
無駄に点灯しませんが、設置位置が不適切だと、正確な明るさを検知できなくなります。
省エネ効果は中程度です。
器具内蔵形は、器具に照度センサーが内蔵されており、明るさを感知して自動的に点灯および消灯します。
別置形は、昼光に合わせて複数の器具を点滅・調光し、明るさを一定に保つことができます。
現在はオフィスなどで使われていますが、将来的には住宅でも使用が期待されます。
手法3 設計による手法
室の用途や行為などに応じて、一室一灯および多灯分散の照明方式を使い分けることが、省エネルギーおよび光環境の向上に有効となります。
一室一灯照明方式は一室の天井中央付近に照明器具を一灯配置する従来型の照明方式をいい、多灯分散照明方式は一室に複数の照明器具を分散して配置し、かつ点灯パターンの細かい設定を行う方式をいいます。
多灯分散照明方式を採用することの利点や効果は以下のとおりです。
・必要とされる人工照明は昼間と夜間で異なり、その空間で行われる行為によっても異なります。
浴室や便所などの機能優先の空間では、行為はほぼ単一であるため、一室一灯が基本となります。
しかし、リビングや寝室では、多様な行為が行われる可能性があり、複数の照明パターンに対応できる多灯分散照明方式にする必要が出てきます。
・これを採用することで、無駄に明るい場所・時間を削減でき、省エネルギーの面からも非常に有効であり、光環境の質も向上できます。
・この方式では、住まい手自らが行為ごとに照明パターンを選択する必要があり、運用方法によって省エネルギー効果に幅ができます。
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