換気設備計画
◆換気設備計画の検討ステップ
◆換気設備計画上の基本事項
◆手法1 ダクト式換気システムの適正化手法(圧力損失の低減手法)
◆手法2 高効率機器の導入(高効率モーター・ファン付属機器)
◆手法3 ハイブリッド換気システムの採用
目的とポイント
換気設備計画は、夏期や冬期に開口部(窓)を閉め切った状態においても、建築基準法で求められている 0.5回/h以上の換気量を確保し、住宅内の空気環境を安全・快適に保つことを目的とした技術です。
水まわり等に設置する局所換気設備は、臭気や水蒸気を排出し、室内空間を衛生的に保つ目的があります。
冬期において、室内と屋外の温度差を利用した温度差換気を効果的に利用すれば、機械換気で消費するエネルギーを削減することができます。(温度差利用のハイブリッド換気)
換気を行う場合には、外気温度の空気がそのまま室内に流れ込みます。
住まい手に直接外気が当らない工夫をすることで、快適性を維持することができます。
換気設備計画の検討ステップ
ステップ1 地域性や住宅の条件の確認、換気方式の仮検討
(1)地域性や住宅の気密性の確認
(2)局所換気設備との関係検討
(3)換気方式・換気経路(ダクトやドアアンダーカット等)の検討
ステップ2 省エネルギーに配慮した換気設備手法の検討
(1)ダクト式換気システムを採用する場合は、ダクト経路の検討(手法1)
(2)直流モニターなどの高効率機器の導入についての検討(手法2)
(3)換気回数0.5回/h以上のファンを計画
ステップ3 冬期の換気方式の検討
(1)冬期、中間期の外気温と室温の差を検討
(2)ハイブリッド換気システムの可能性を検討
ステップ4 換気装置の詳細決定
換気設備計画上の基本事項
1.換気設備方式の種類
換気システムの種類 | 利点 | 注意点 |
第一種ダクト式換気(居室機械給気、集中機械排気) | 各居室で確実な換気が可能 居室における運転騒音が小 インテリアデザインがよい 熱交換型の場合、コールドドラフト防止と空調負荷低減効果が期待できる | 各室へダクト配管が必要 機器のメンテナンスに注意が必要 |
第二種ダクト式換気(居室機械給気) | 各居室で確実な換気が可能 居室における運転騒音が小 天井裏や壁体内からの流入を抑制するので、シックハウス対策として有効 インテリアデザインがよい 排気用ダクトが不要 | 各居室の排気口から屋外騒音の侵入の可能性あり 各室へのダクト配管が必要 |
第三種ダクト式換気(居室機械排気) | 各居室で換気が可能 居室における運転騒音が小 インテリアデザインがよい 扉のアンダーカットを要しないので、プライバシーが確保できる | 各居室の給気口から屋外騒音の侵入の可能性あり 給気口のコールドドラフトへの配慮が必要 各室へダクト配管が必要 |
第一種換気居室設置型(居室機械給排気) | 各居室で確実な換気が可能 施工が簡単 扉のアンダーカットを要しないので、プライバシーが確保できる 有効換気量率の高い熱交換型の場合、コールドドラフト防止と空調負荷低減効果が期待できる | 運転騒音が居室で発生 機器が露出するため、インテリア性がよくない 外壁穴が多数存在するため、外観がよくない 給気によるコールドドラフトへの配慮が必要 |
第二種換気居室設置型(居室機械給気) | 各居室で確実な換気が可能 天井裏や壁体内からの流入を抑制するので、シックハウス対策として有効 施工が簡単 扉のアンダーカットを要しないので、プライバシーが確保できる | 各居室の排気口から屋外騒音の侵入の可能性あり 機器が露出するため、インテリア性がよくない 外壁穴が多数存在するため、外観がよくない 運転騒音が居室で発生 給気によるコールドドラフトへの配慮が必要 |
第三種換気局所換気利用(集中機械排気) | 費用が安価 施工が簡単 | 各居室の給気口から屋外騒音の侵入の可能性あり 給気口のコールドドラフトへの配慮が必要 |
2.換気設備計画の注意点
(1)局所換気と常時全般換気の関係
台所の換気扇には、居室の温熱環境や換気経路を乱さないために、できるかぎり同時給排気型の換気扇を用いるか、専用の給気口を設置する必要があります。
台所の換気扇には、少ない排気風量で調理にともなう汚染空気を効率的に排出することが可能な、排気捕集性能の高い機器が商品化されています。
それらを選択することは、電力消費や暖冷房設備機器への負荷の点で有利です。
また、第三種換気で全般換気を行う場合、各居室にバランスよい給気を確保するために、局所換気設備には停止時にシャッターを閉鎖できるしくみの機器を選択することが望ましいといえます。
(2)メンテナンスを意識した換気設備計画
常時換気設備は、メンテナンスがしやすい位置に設置することが望ましいといえます。
メンテナンスについて、設計段階での対応策としては、以下の3つが考えられます。
a.フィルターがないファンは、換気扇に汚れが付着しメンテナンスが非常に難しくなるので、換気機器本体内部にフィルターが装着され、かつ清掃などのメンテナンスを簡単に行える機種を選択する。
b.清掃が容易となるように、換気装置を納戸や小屋浦などの収納空間に露出させて設置したり、換気ユニット本体を縦置きに設置するなどの工夫をする。
c.住まい手に対して定期的な清掃が必要であることを伝える。
また、外気取り入れ口については忘れがちですが、防虫網が設置されていることが多く、防虫網も定期的にメンテナンスを行わないと、換気能力が低下します。
2階においては、バルコニーなどから清掃できる場所に設置することが基本です。
また、1階においては、地上からは容易に届かない場所に設置する場合が多くなり、脚立などを用いて清掃できるようにしておく必要があります。
防虫網を設置せずに機器の側にフィルターを設置する場合にも、メンテナンスの容易性を検討する必要があります。
この場合には、外壁部分に防鳥網を設置し、ダクト内への鳥の侵入を防ぐ必要があります。
(3)電動式気密シャッター付属機種の採用時の注意点
壁取り付型換気扇(パイプファン)のうち、局所換気用に設計された機種を常時換気に用いる場合は、省エネルギーの観点から別途注意が必要です。
このような換気扇には、電動式の気密シャッターが付属しているものがあります。
気密シャッターは、換気停止時の隙間風対策として用意されており、開放している時間帯に電力消費が生じています。
そのため、シャッターがない機種に比べると、消費電力が2倍近くに達します。
常時運転を想定する場合には、電動式気密シャッターが付属していない機種を選択することにより、省エネルギーを実現できます。
ただし、冬期には換気風量低減のため運転を停止させる場合もあり、そのために電動式気密シャッターが付属している機種を選ぶこともあります。
(4)給気口位置および給気方法の配慮
冬期のドラフト防止のため、給気口はなるべく高い位置(床面からの高さ1.6m程度以上)に設けることが必要です。
また、居住域に直接冷気が達することを防ぐために、輻流型(冷気が壁等に沿って放射状に噴出される形状のもの)等の給気口の採用を検討する必要があります。
手法1 ダクト式換気システムの適正化手法(圧力損失の低減手法)
(1)ダクト径の適正化
施工性や省スペースを優先しすぎて細型のダクトを用いることがありますが、できるだけそうしたことを避け、風量に見合った適切な太さのダクトを用いることが重要です。
(2)ダクト長さの適正化、曲りの軽減
ダクトの長さを短くしたり、曲りを少なくすることにより、圧力損失を抑えることができ、1ランク風量の小さい機種とすることが可能になります。
手法2 高効率機器の導入(高効率モーター・ファン付属機器)
換気機器の高効率化の手法としては、モーター効率とファン効率の向上があげられます。
これは、既存の換気システムを採用する場合とハイブリッド換気システムを採用する場合の、いずれにおいても重要になる手法です。
モーターとファンの組み合わせによって、消費電力は各メーカーの新旧の機種で差がみられますので、カタログ等で十分に検討する必要があります。
また、これらの機器は、今後も開発が進められていくことが予想されますので、設計時点において最も効率のよい機器を選択することが求められます。
具体的には、換気機器のモーターには、交流(AC:オルタネイティングカレント)と直流(DC:ダイレクトカレント)の2つの仕様があります。
省エネモーターであるDC仕様のモーターは、AC仕様と比較して1/4~3/4の消費電力となります。
DCブラシレスモーターは、消費電力が小さいほか、風量の制御を容易に行える特徴をもっています。
手法3 ハイブリッド換気システムの採用
ハイブリッド換気システムは、室内温度と外気温度の差が大きい時期には、自然給排気口や外壁等に存在する隙間を経由して行われる換気(自然換気)を用い、中間期や夏期には機械換気設備を利用する方式です。
(1)ハイブリッド換気システムの採用条件
ハイブリッド換気システムは、室内外の温度差を利用する方式のため、2階建て以上の住宅が対象となります。
平屋建ての住宅でも採用できますが、排気塔を設置するなど2階建てと同等の煙突効果(内外の温度差に基づく浮力効果)を得る工夫が必要となります。
このシステムは、温暖地域と寒冷地域のいずれでも採用できます。
寒冷地域では、室内外の温度差が大きく利用可能性は高くなりますが、外部から流入する空気が居住域に達する前に室内の空気と混ざり加湿されるように工夫することが望まれます。
(2)ハイブリッド換気システムのしくみと効果
自然換気と機械換気の切り替えは、室内外の温度差を温度計によって検地して制御する方法により行われます。
また、このシステムを導入するには開口面積の大きい外壁給排気口が必要となります。
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