京漬物

京漬物

京漬物といえば、あっさりとしていて、上品な味わいのお漬け物というイメージがありますが、厳密な定義はありません。

どんなに料理がおいしくても、漬物がまずければそれまでのどんなに美味しいご馳走も台無しになるとも言われるほど重要な役割をしているのが、京都の漬物です。

漬物の歴史

漬物の歴史は相当古く、古来より日本人にはなくてはならないものでした。

漬物のルーツは明らかになっていません。

一説によると、3000年~4000年も昔、まだ野菜もない頃、芹やワラビなどの山菜を海水で漬けたのがはじまりともいわれています。

ただ、中国から伝わってきたことは間違いないようです。




奈良時代

記録に残っている限りでは、天平年間(729~749)の木簡が最初です。

ウリ、青菜などの塩漬けについての記載があります。


平安時代


『延喜式』(905年~967年)にはさまざまな漬物の記載があります。

その中には糟漬(かすづけ)も出てきます。




室町時代


中世に入ると、漬物の形は大体定まり、漬ける材料が多様化しました。

大根、ウリなどを塩、味噌、酒粕に漬けて香りを高くしたものを「香の物」と呼ぶようになりました。




江戸時代


糠漬(ぬかづけ)の出現によって、家庭の漬物事情が大きく変化しました。

それまで、酒粕や味噌を利用した漬物は、一回きりしか漬け床を利用することができませんでした。

しかし糠(ぬか)の漬け床は、再度材料を漬け込むことができたのです。

そのため、元禄年間に糠漬のスタイルが確立されると、またたく間に家庭に普及しました。

天保7年には有名な『四季漬物塩嘉言』(しきつけものしおかげん)が刊行されました。 

今日通用している漬物の名称である「沢庵漬」、「べったら漬」、「どぶ漬」、「三五八漬」、「野沢菜漬」、「奈良漬」、「日野菜漬」、「糠漬」などは江戸時代に出揃いました。


四季漬物塩嘉言
天保7年(1836年)に、江戸の漬物問屋「小田原屋」の主人が著した漬物の総合専門書。

沢庵漬、沢庵三年漬、五年漬、百一漬、刻漬、大坂切漬、浅漬、大坂浅漬、菜漬、京系菜漬、糠味噌漬、瓜奈良漬、生姜味噌漬、日光漬、梅干し漬、千枚漬、印籠漬、渦巻漬など64品の作り方が詳しく記述されています。

明治時代


砂糖が漬物に広く使われるようになりました。

 

京漬物の特徴


京都には伝統的な「千枚漬」や「しば漬」にとどまらず、様々な種類の漬物があります。

伝統にとらわれずに、研究を続けて、古来よりも更に優れた京漬物を生み出そうとしています。


京都の気候と漬物


昔から京都は気候性により食べ物の保存技術が発達していました。

その保存技術を大いに活用したのが京漬物です。

また、京都は質のよい野菜が採れるという土地でもあります。

京都の大地と水で育った京野菜を京都の伝統の技術で漬けあげる、単なる食品から芸術の域にも達した、京漬物は日本が誇る伝統食品です。

 

京の漬物


千枚漬


千枚漬は、約140年前に、御所の大膳寮で料理方をつとめていた大藤藤三郎の発案です。

ある漬物屋が売っていた、かぶらの漬物からヒントを得て改良を加えたのが、今の千枚漬の始まりです。

千枚漬は、薄く削ったところから「千枚にも削ったのでは」と言われたことに由来します。

千枚漬は京都の伝統野菜である「聖護院かぶら」を使っています。

これを薄く薄く切って、コンブと赤唐辛子の入ったお酢で漬けます。




しば漬


大原の名刹三千院の賢僧、聖応大師が創成したのが起源と言われています。

茄子、胡瓜、茗荷などを、大原の里の名産である赤紫蘇の葉とともに塩漬けしたものです。

大原のあたりは水質もよく、盆地の地勢や気象条件など、良い紫蘇が育つ条件がそろっています。

さらに、十分な手数を加えて栽培されるので、この辺で採れる紫蘇の香り高さは抜群です。

そのため大原ではどの家でも古くから保存食として漬けていました。

紫蘇の葉の色から「紫葉漬」という名前になったといわれます。




すぐき


すぐき菜を樽漬けし、乳酸発酵させたものです。

江戸時代、元禄の頃に出版された『本朝食鑑』に「年を経て酸味を生ずるので酸茎と称す」』と記されています。

すぐきの原料、すぐき菜は土を選ぶカブラの一種で、栽培地域が松ヶ崎より西、北山通りより北部というきわめて狭い上賀茂地域に限られていました。

そのため、すぐきの栽培や漬物は、上賀茂の社家から始まったと言われています。

しかし、主に上賀茂地域でつくられていた理由には別の説もあります。

桃山時代の頃に上賀茂神社に奉仕する社家がすぐき菜の種子を手に入れ、珍しい高級品として上層階級の贈答用に栽培したのが始まりで、それゆえに永く製法は秘伝として門外を出なかったという説です。

三百年ほど前、ある年の飢饉に難民救済のために製法を公開し、ようやく急速に伸展しました。

京都の街でも売られるようになったのは明治も終わりの頃で、大阪・東京へは大正時代になってからのことでした。

冬の風物詩となったすぐきの「天秤漬」(天秤を使って漬ける)は、昭和初期からでてきました。

 

千枚漬の作り方


1.聖護院かぶら


千枚漬には、京都の隣、丹波・亀岡の「聖護院かぶら」が使われます。

盆地ならではの深い霧と著しい寒暖の差で、きめ細かく、身の締まったかぶらが千枚漬に使われます。


2.皮をむく


早朝、かぶらが届くとすぐに皮をむきます。大胆に、厚くむきます。

大根で言う「しょうじ」という部分もむき、美味しい部分だけを千枚漬にします。


3.かんなでかく


そのかぶら一個を大型のカンナで約30枚ほどにかきます(削ります)。

厚さは約2mm。一個かくのに12~3秒。

かきながら、水分の状態、手で受けた時の手触りでかぶらの良し悪しを判断します。

四斗樽に使うかぶら、約72個を一気にかきます。


4.かぶらを並べる


カンナでかいたかぶらを均等に並べます。

これは味が均等にいきわたるための大事な作業です。

また、かぶらや昆布の粘りで、この形は製品になるまでずっと保たれます。


5.下漬け


次に塩で下漬けします。

千枚漬けは塩加減で味の7~8割が決まるので、一番大事な難しい作業です。

暖かいときは心持ち塩をたくさんにし、寒くなったら漬ける日数を延ばします。

塩は下のほうに落ちてくるので、下は少なめ、上は多めにするなどの工夫をします。

最後に重石をのせます。


6.昆布に酢をかける


昆布に京都の米酢をかけます。

これによって、昆布のうまみを引き出し千枚漬に少しの酸味をつけます。


7.水をきる


本漬けのミツを充分に吸うように、樽をひっくり返して、余分な水分や塩分を切ります。


8.本漬け


昆布をのせ、砂糖と秘伝のミツをかぶらに振りかけます。

ミツは味醂を中心にそれぞれの漬物屋が秘伝の味を持っています。

その上にかぶらをのせて、また昆布、砂糖、ミツ……と交互に重ねていきます。


9.樽を開ける


千枚漬の完成です。

 

どぼ漬の作り方


京都では昔から家庭で「どぼ漬」といわれる糠漬が作られていました。


糠床を作る材料


米糠:1kg

塩:250g(夏ならば塩を多めにして仕込みます)

水:7カップ(600~700ml)

唐辛子:4~5本

昆布:30cmくらい

さびた鉄鎖:1本

漬捨用の野菜屑:キャベツや白菜の外葉、大根やにんじんの皮やヘタなどなんでもよい


作り方


1.米糠は生の方が熟成が早いものの、米虫などが付きやすいので、フライパンで軽く炒ります。あんまり長く炒ると逆に熟成しにくくなるので、軽く乾煎りにします。

2.鍋に水・塩を入れ、あらかじめ火にかけて沸騰させたあと冷ましておきます。

3.粘土くらいの固さにして、1日1回必ず底からかき混ぜます。

4.2週間くらいしたら、糠が発酵してきますので、「捨て漬」をします。

 

日本各地の漬物


漬物の製法は実に多彩です。

「塩」「糠」「酢」など様々な漬け方がありますし、また、漬ける野菜の種類も多くあります。

漬ける時間、環境、条件などの違いによっても味が変わるため、実質、無限大の種類があるともいえます。

日本全国には800種類以上の漬物があります。




北海道


松前漬:するめ、昆布を醤油とみりんに漬け込んだもの。


秋田


いぶりがっこ:煙で燻した干し大根を、糖と塩に半年間漬け込んだもの。


岩手


金婚漬:ウリのワタをくり抜き、その中にコンブで巻いた大根や人参を詰め味噌漬けにしたもの。


栃木


たまり漬:熟成したもろみのエキス(たまり)に大根やキュウリ、ナス、らっきょうなどの野菜をベッコウ色になるまで漬け込んだもの。


茨城


納豆漬:刻み野菜を納豆で漬けたもの。


東京


べったら漬:大根を麹(こうじ)で漬けたもの。


信州


野沢菜漬:塩漬にした野沢菜を、昆布、唐辛子などで漬け込んだもの。


静岡


ワサビ漬:昔は糠漬けのワサビ漬けだったが、江戸時代の中期になって、糟漬に改良し今日のワサビ漬になりました。


愛知


守口漬:守口大根を、酒粕とみりんで漬け込んだもの。


石川


かぶらずし:カブを厚手に輪切りにして、その間にブリをはさみ、塩と麹とコンブで漬け込んだもの。


奈良


奈良漬:酒粕に野菜を漬け込んだもの。


広島


広島菜漬:広島菜を麹やコンブを使って塩漬けにしたもの。


愛媛


緋のカブ漬:塩で下漬けした赤カブをダイダイの漬け汁で漬け直したもの。


山口


寒漬:半干しにした大根を海水につけ、塩気をもたせてから荒縄で軒下につるし寒風の中で完全に干したもの。


熊本


高菜漬:高菜を塩漬にした後、唐辛子などを入れた調味液に漬け込んだもの。


鹿児島


壺漬:別名は「山川漬け」。干し大根を壺に漬け込んだもの。


沖縄


パパイヤ漬:パパイヤの実を薄く切って黒糖と酢で調味した漬け汁に漬け込んだもの。

 

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